ナルティークOD錠75mgについて
- 大阪頭痛脳神経クリニック
- 2月18日
- 読了時間: 9分
更新日:6 日前

はじめに
ナルティークOD錠75mg(一般名:リメゲパント)は、日本で初めて片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方の適応を有する画期的な治療薬です。
目次
片頭痛とは
片頭痛の症状
片頭痛は、頭の片側または両側に起こる拍動性(ドクドクと脈打つような)の激しい頭痛が特徴的な疾患です。主な症状には以下があります:
頭痛:中等度から重度の痛み(4~72時間持続)
随伴症状:吐き気・嘔吐、光過敏、音過敏
日常活動の制限:階段昇降などの動作で痛みが悪化
患者様への影響
片頭痛は世界で約10億人が罹患する慢性疾患で、日常生活に深刻な影響を与えます:
仕事への影響:欠勤率最大22.5%、生産性低下70.6%
生活の質:障害生存年数別で第4位の疾患
社会参加:学業、職業、社会活動への参加制限
ナルティークOD錠75mgについて
作用機序(薬の効き方)
ナルティークはCGRP受容体拮抗薬(ゲパント)という新しいクラスの治療薬です。
CGRPとは
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛の発症に重要な役割を果たす物質です。片頭痛発作時に以下の作用を示します:
脳血管の拡張を引き起こす
神経原性炎症を誘発する
痛みのシグナル伝達を促進する
ナルティークの作用
ナルティークは、CGRPが受容体に結合することを阻害し、以下の効果を発揮します:
血管拡張の阻害:頭蓋内動脈拡張の正常化
炎症の抑制:神経原性炎症のカスケードを遮断
痛み伝達の阻害:三叉神経から脳幹への痛みシグナルを抑制
製剤の特徴
口腔内崩壊錠(OD錠):舌の上または舌下で唾液により崩壊、水なしで服用可能
半減期:約11時間(持続的な効果)
両適応:急性期治療と予防治療の両方に使用可能
臨床試験の結果
急性期治療の効果
海外第Ⅲ相試験(BHV3000-303試験)
1,351名の患者様を対象とした大規模な国際試験です。
評価項目 | ナルティーク群 | プラセボ群 | 差 | 統計学的有意性
|
投与2時間後の疼痛消失 | 21.2% | 10.9% | +10.4% | p<0.0001 |
投与2時間後のMBS消失 | 35.1% | 26.8% | +8.3% | p=0.0009 |
投与60分後の疼痛軽減 | 36.8% | 31.2% | +5.5% | p<0.05 |
※MBS(Most Bothersome Symptom):最も煩わしい症状(吐き気、光過敏、音過敏のうち最も気になる症状)
国内第Ⅱ/Ⅲ相試験(BHV3000-313試験)
706名の日本人患者様を対象とした試験です。
評価項目 | 75mg群 | 25mg群 | プラセボ群
|
投与2時間後の疼痛消失 | 32.4% | 21.0% | 13.0% |
投与2時間後の疼痛軽減 | 79.0% | 66.8% | 56.5% |
投与2時間後のMBS消失 | 65.1% | 53.4% | 50.4% |
疼痛消失率の比較(2時間後)

予防治療の効果
海外第Ⅱ/Ⅲ相試験(BHV3000-305試験)
695名の患者様を対象とした12週間の予防治療試験です。
評価項目 | ナルティーク群 | プラセボ群 | 差 | 統計学的有意性
|
月間片頭痛日数の減少(最後の4週間) | -4.3日 | -3.5日 | -0.8日 | p=0.0099 |
≥50%片頭痛日数減少達成率 | 49% | 41% | +8% | p=0.044 |
国内第Ⅲ相試験(BHV3000-309試験)
484名の日本人患者様を対象とした12週間の予防治療試験です。
評価項目 | ナルティーク群 | プラセボ群 | 差 | 統計学的有意性
|
月間片頭痛日数の減少(最後の4週間) | -2.4日 | -1.4日 | -1.1日 | p=0.002 |
≥50%中等度-重度片頭痛日数減少達成率 | 41.7% | 34.4% | +7.3% | - |
安全性プロファイル
主な副作用
臨床試験において報告された主な副作用は以下の通りです:
副作用 | 発現頻度 | 重症度
|
便秘 | 1%以上 | 軽度~中等度 |
悪心 | 1-2% | 軽度~中等度 |
尿路感染症 | 1% | 軽度~中等度 |
鼻咽頭炎 | 1-2% | 軽度 |
重要な安全性情報
重大な副作用:過敏症があらわれることがあります
重篤な有害事象:臨床試験では非常に少ない報告でした
肝機能への影響:一部で肝機能検査値の上昇が見られましたが、臨床的に問題となるレベルではありませんでした
特別な注意が必要な患者様
腎機能障害のある患者様
末期腎不全(eGFR 15mL/min/1.73m²未満):投与を避けることが望ましい
中等度・重度腎機能障害:副作用が増強される可能性があります
肝機能障害のある患者様
重度肝機能障害(Child-Pugh分類C):投与を避けることが望ましい
中等度肝機能障害(Child-Pugh分類B):副作用が増強される可能性があります
心血管疾患について
片頭痛は心血管疾患のリスクファクターとされており、CGRP阻害による理論的な心血管系リスクの可能性から、継続的なデータ収集を行っています。現在までの臨床試験では明らかな心血管系リスクの増加は確認されていません。
使用方法と注意点
用法・用量
急性期治療
用量:リメゲパントとして1回75mg
服用タイミング:片頭痛発作時に頓服で経口投与
発症抑制(予防治療)
用量:リメゲパントとして75mg
服用タイミング:隔日(2日に1回)経口投与
服用方法
舌の上または舌下で唾液を浸潤させる
完全に崩壊するまで待つ
水なしで飲み込む
重要な注意事項
1日の総投与量:75mgを超えないこと
急性期治療で効果がない場合:再検査の上、他の治療法を考慮
予防治療の適応:月に複数回以上の発作がある患者様、または慢性片頭痛の患者様
授乳中の使用について
Baker et al.(2022年)による授乳期の薬物動態研究では、健康な授乳婦12名を対象にナルティーク75mgを単回投与した結果:
授乳中の安全性データ
相対的乳児用量(RID):0.51%(平均)
安全性の目安:一般的に10%未満、特に1%未満は安全性が高いとされる
乳汁移行:母体血漿に対する乳汁中濃度比は0.20
安全性:研究期間中に有害事象の報告なし
結論:ナルティークの乳汁移行は極めて少なく、授乳中の使用において安全性が示されました。
注意点:妊娠・授乳は添付文書上も有益性があれば投与可で禁忌にはなっておりません。しかし新薬でありデータが蓄積されているわけではないので積極的に妊娠期・授乳期の患者様に推奨する根拠も今のところありません。
まとめ
ナルティークOD錠75mgは、片頭痛の病態に直接作用する画期的な治療薬です。急性期治療と予防治療の両方に使用でき、国内外の臨床試験でその有効性と安全性が確認されています。
ナルティークの特徴
日本初の急性期治療・予防治療両適応薬
内服薬のCGRP受容体拮抗という新しい作用機序
水なしで服用可能な口腔内崩壊錠
優れた有効性と良好な安全性プロファイル
片頭痛でお悩みの患者様は、担当医師と相談の上、適切な治療選択肢として検討してください。
コメント
ナルティークは2025年の12月頃からおそらく使用可能になる薬剤です。他の保険適応の薬剤と比較した場合のメリットとしては
今までCGRPに関連した治療薬は注射剤しかなかった中、内服薬で使用可能。(注射嫌いの方、手技的に使用できない方などがCGRP関連の薬剤を使える)
予防も急性期どちらの選択肢でも使えるのでまず痛み止めとして使用して副作用など含めて使用感を試してみることが可能。
他の急性期治療薬は薬剤使用過多の頭痛のリスクがある中で薬剤使用過多の頭痛の原因とはならないと考えられている。
急性期治療としてはCGRP関連抗体の注射を打っている方も使用可能で血管収縮のリスクもないのでトリプタン系の薬が使用できない方にも使用が可能
注射製剤は適正使用ガイドが存在し、使用できる医師に制限があり、従来の内服の予防薬の使用歴が求められたがナルティークは適正使用ガイドがなく、どこの病院でも使用可能で第一選択薬としても使用可能。
上記のものが考えられます。一方でデメリットと感じる点ですが、
2日に1回という飲み方なので飲み忘れ、2日連続で飲んでしまったなど内服ミスが生じやすい。
新薬なので発売されて1年は予防療法で使用するには2週間毎の通院が必要になってしまう。
予防も急性期治療薬としても1日に1錠しか内服できないので予防として内服した日の頭痛発作には別の急性期治療薬を使用しなければいけない。
他の急性期治療薬であるトリプタン系薬剤やレイボーと比較すると薬価が高くなる可能性が高い。
どこの病院でも処方可能なのはメリットの一方で適切に片頭痛と診断をされていない状態で他の頭痛なのにも関わらずとりあえず使用されて効果を感じなかったり、経済的な損失を受ける可能性がある。
上記がデメリットとして現時点では考えております。
いずれにせよ、新しい内服の選択肢が生まれたことは注射製剤がどれも合わなかった方や、注射が理由で治療が踏み出せなかった方には朗報と思います。興味がある方は一度頭痛専門医の診察を受け、相談されることをお勧めいたします。
参考文献
総合製品情報概要_ナルティークOD錠75mg. ファイザー株式会社, 2025年9月作成.
適正使用ガイド_ナルティークOD錠75mg. ファイザー株式会社, 2025年9月作成.
Croop R, Goadsby PJ, Stock DA, et al. Efficacy, safety, and tolerability of rimegepant orally disintegrating tablet for the acute treatment of migraine: a randomised, phase 3, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2019;394(10200):737-745.
Ikeda K, Matsumori Y, Kudo M, et al. Efficacy and safety of rimegepant for the acute treatment of migraine in Japan: A dose-ranging, double-blind, randomized controlled trial. Headache. 2025;65:1-10.
Croop R, Lipton RB, Kudrow D, et al. Oral rimegepant for preventive treatment of migraine: a phase 2/3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2021;397(10268):51-60.
Kitamura S, Matsumori Y, Yamamoto T, et al. Efficacy and safety of rimegepant for the preventive treatment of migraine in Japan: A double-blind, randomized controlled trial. Headache. 2025;65:1403-1412.
Baker TE, Croop R, Kamen L, et al. Human Milk and Plasma Pharmacokinetics of Single-Dose Rimegepant 75 mg in Healthy Lactating Women. Breastfeed Med. 2022;17(3):277-282.
Ashina M. Migraine. N Engl J Med. 2020;383(19):1866-1876.
Edvinsson L, Haanes KA, Warfvinge K, Krause DN. CGRP as the target of new migraine therapies - successful translation from bench to clinic. Nat Rev Neurol. 2018;14(6):338-350.
Durham PL. Calcitonin gene-related peptide (CGRP) and migraine. Headache. 2006;46 Suppl 1:S3-8.
監修医師紹介
大阪頭痛脳神経クリニック
猪股 拓海 Takumi Inomata

資格・所属学会
日本内科学会 内科専門医
日本頭痛学会 頭痛専門医
日本神経学会 脳神経内科専門医
専門分野
脳神経内科
略歴
2018年
秋田大学医学部医学科 卒業
市立秋田総合病院 初期臨床研究プログラム
2020年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2022年
国立病院機構 あきた病院 脳神経内科
2023年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2025年
天王寺だい脳神経外科
2026年
大阪頭痛脳神経クリニック / 天王寺だい脳神経外科
天王寺だい脳神経外科
山田 大 Dai Yamada

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
身体福祉障害者指定医
難病指定医
日本脳神経外科コングレス
日本頭痛学会
日本脳卒中学会
日本認知症学会
日本頭痛学会 頭痛専門医
専門分野
頭痛の治療
認知症の治療
首、腰の病気、しびれ
血管の病気
めまい、たちくらみ
てんかん
高血圧、高脂血症、糖尿病
リハビリテーション
略 歴
2013年
近畿大学医学部医学科 卒業
高砂市民病院 初期研修医 内科、外科、製鉄記念広畑病院 救急科
2015年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2018年
医療法人寿会 福島県 総合南東北病院 脳神経外科
2019年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2021年12月
医療法人寿会 富永病院 退職
2022年2月
天王寺だい脳神経外科 開院


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