片頭痛とビタミンD
- 大阪頭痛脳神経クリニック
- 4 日前
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片頭痛に悩む皆様へ
毎日のように襲ってくる頭痛、仕事や家事に支障をきたす痛み、薬に頼らざるを得ない生活...。片頭痛は単なる頭痛ではなく生活の質を大きく左右する深刻な疾患です。
しかし、最新の研究により身近な栄養素であるビタミンDが片頭痛の改善に大きな可能性を秘めていることが明らかになりました。
目次
片頭痛とCGRPの関係を理解しましょう
片頭痛の痛みの原因として、近年注目されているのがCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質です。CGRPは私たちの神経系で作られる小さなタンパク質で、血管を拡張させたり、痛みの信号を脳に伝えたりする重要な役割を担っています。
CGRPが片頭痛を引き起こすメカニズム
血管の拡張:CGRPが血管を急激に拡張させ、脈打つような痛みを引き起こします
炎症の促進:脳の血管周囲に炎症を起こし、痛みを増強させます
痛み信号の伝達:三叉神経(顔面の感覚を司る神経)を通じて強い痛み信号を脳に送ります
症状の持続:一度活性化されると、長時間にわたって痛みが続きます
実際に、片頭痛の発作中には血液中のCGRP濃度が通常より高くなることが確認されており、現在ではCGRPを標的とした新しい片頭痛治療薬も開発されています。
ビタミンDがCGRPを減らす
研究の概要
研究場所:イラン・テヘラン大学医学部
研究期間:2018年7月〜2019年7月
研究方法:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(最も信頼性の高い研究方法)
対象患者:18〜45歳の反復性片頭痛患者80名
投与内容:ビタミンD 2000 IU/日 または プラセボ(偽薬)を12週間投与
研究結果の詳細データ
項目 | ビタミンD群(38名) | プラセボ群(36名) | 統計的有意性 |
月間頭痛日数 | 8.04日 → 5.07日 (-2.90日改善) | 7.69日 → 7.26日 (-0.14日) | p < 0.001 |
MIDAS障害スコア | 29.75 → 19.38 (-10.38改善) | 36.87 → 35.36 (+0.33悪化) | p < 0.001 |
血清CGRP濃度 | 195.27 → 167.96 ng/L (-27.31減少) | 166.05 → 176.71 ng/L (+12.57増加) | p = 0.006 |
※MIDASスコアとは:片頭痛が日常生活にどれだけ支障をきたしているかを数値化したもの。数値が低いほど生活への影響が少ない。
視覚で見る改善効果



前兆のある片頭痛での特別な効果
この研究で特に注目すべきは、前兆のある片頭痛の患者様でより顕著な改善が見られたことです。前兆とは、頭痛が始まる前に現れる視覚異常(キラキラした光が見える、視野の一部が見えなくなるなど)や感覚異常のことです。
片頭痛のタイプ | 治療群 | 頭痛日数の変化 | MIDAS障害スコアの変化 |
前兆あり片頭痛 | ビタミンD群 | -4.58日 | -16.92点 |
プラセボ群 | -0.25日 | +5.00点 | |
前兆なし片頭痛 | ビタミンD群 | -2.09日 | -7.22点 |
プラセボ群 | -0.10日 | -1.46点 |
重要なポイント:前兆のある片頭痛の患者様では、ビタミンD補給により月間頭痛日数が約4.6日も減少し、生活の質を示すMIDASスコアも大幅に改善しました。
これは前兆なし片頭痛の改善効果の約2倍に相当します。
なぜビタミンDが効くのか?そのメカニズム
ビタミンDが片頭痛を改善する3つのメカニズム
① CGRPの産生抑制
今回の研究で初めて証明されたように、ビタミンDはCGRPの血中濃度を有意に低下させます。CGRPが減ることで血管の異常な拡張や炎症が抑制され、片頭痛の発症が防がれます。
② 神経の炎症を抑制
ビタミンDは脳内の炎症性物質(サイトカイン)の産生を抑制し、三叉神経系の過剰な活動を鎮静化させます。これにより痛みの信号が脳に伝わりにくくなります。
③ 一酸化窒素(NO)の調節
片頭痛の引き金となる一酸化窒素の過剰産生を抑制し、血管の安定化を図ります。ビタミンDは血管の健康維持にも重要な役割を果たしています。
これらのメカニズムが相互に作用することで片頭痛の根本的な原因にアプローチし、症状の改善をもたらすと考えられています。
安全性について:副作用は軽微
この研究では、ビタミンD 2000 IU/日を12週間摂取しても、重篤な副作用は一切報告されませんでした。
報告された副作用
ビタミンD群:軽度の胃腸症状 5名(12.5%)
プラセボ群:軽度の胃腸症状 8名(22.2%)
むしろプラセボ群の方が胃腸症状を訴える患者様が多く、ビタミンDの安全性の高さが確認されました。
ビタミンD 2000 IUは、一般的に推奨される上限摂取量(4000 IU/日)の半分であり、長期間摂取しても安全とされる量です。
患者様の満足度:実感できる改善効果
数値だけでなく、患者様ご自身が実感する改善度も調査されました
50〜70%の改善:ビタミンD群の17.5%(7名)が実感
70%以上の改善:ビタミンD群の10%(4名)が実感
合計で27.5%の患者様が50%以上の改善を実感
一方、プラセボ群では大多数が20%未満の改善のみ
この結果は、ビタミンDが統計的に有意な改善をもたらすだけでなく患者様の日常生活においても実感できる改善をもたらすことを示しています。
コメント
ビタミンDが頭痛の改善に寄与する可能性があるという研究です。
ビタミンB2なども片頭痛予防効果があるともされており、小児の症例に使用されることもあります。ビタミンはサプリ類でも摂取できますし、ビタミンDであれば骨の形成にも関わりますので良い面が多いかと思います。
摂取量が多すぎると高カルシウム血症などにもなるリスクがあるので摂取が多ければよいというものでもない点にはご注意ください。
また、他の予防薬などと異なり必ず頭痛に効果出るとは限らない面もありますのでサプリなど使用の際はご理解して内服を検討ください。
参考文献
Ghorbani, Z., et al. (2020). The effects of vitamin D supplementation on interictal serum levels of calcitonin gene-related peptide (CGRP) in episodic migraine patients: post hoc analysis of a randomized double-blind placebo-controlled trial. The Journal of Headache and Pain, 21(1), 22.
注意事項:この記事は医学論文の内容を患者様向けに分かりやすく解説したものです。治療方針の決定には必ず医師にご相談ください。
監修医師紹介
大阪頭痛神経クリニック
猪股 拓海 Takumi Inomata

資格・所属学会
日本内科学会 内科専門医
日本頭痛学会 頭痛専門医
日本神経学会 脳神経内科専門医
専門分野
脳神経内科
略歴
2018年
秋田大学医学部医学科 卒業
市立秋田総合病院 初期臨床研究プログラム
2020年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2022年
国立病院機構 あきた病院 脳神経内科
2023年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2025年
天王寺だい脳神経外科
2026年
大阪頭痛脳神経クリニック / 天王寺だい脳神経外科
天王寺だい脳神経外科
山田 大 Dai Yamada

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
身体福祉障害者指定医
難病指定医
日本脳神経外科コングレス
日本頭痛学会
日本脳卒中学会
日本認知症学会
日本頭痛学会 頭痛専門医
専門分野
頭痛の治療
認知症の治療
首、腰の病気、しびれ
血管の病気
めまい、たちくらみ
てんかん
高血圧、高脂血症、糖尿病
リハビリテーション
略 歴
2013年
近畿大学医学部医学科 卒業
高砂市民病院 初期研修医 内科、外科、製鉄記念広畑病院 救急科
2015年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2018年
医療法人寿会 福島県 総合南東北病院 脳神経外科
2019年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2021年12月
医療法人寿会 富永病院 退職
2022年2月
天王寺だい脳神経外科 開院



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