CGRP抗体薬の3年間治療が片頭痛の経過を変える可能性
- SNS 医療法人壮大会
- 11月17日
- 読了時間: 6分
はじめに
CGRP抗体薬による3年間の治療が、片頭痛の根本的な改善をもたらす可能性が明らかになりました。これまでの薬物治療とは異なり、病気の経過そのものを変える可能性があります。
この記事では、イタリアで実施された大規模研究(I-GRAINE研究)の結果をもとに、CGRP抗体薬の3年間治療がもたらす効果について、ご説明いたします。
1. CGRP抗体薬とは何か?
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)抗体薬は、片頭痛の予防治療における革命的な新薬です。従来の予防薬とは全く異なるメカニズムで作用し、片頭痛の根本的な原因に直接働きかけます。
CGRPの役割
CGRPは片頭痛発作時に大量に放出される神経伝達物質で、血管の拡張や炎症を引き起こし、激しい頭痛を生じさせます。CGRP抗体薬は、このCGRPの働きを特異的にブロックすることで、片頭痛発作を予防します。
現在使用可能な薬剤
薬剤名 | 作用機序 | 投与方法 | 投与間隔 |
エレヌマブ(アイモビーグ®) | CGRP受容体を阻害 | 皮下注射 | 月1回 |
ガルカネズマブ(エムガルティ®) | CGRP分子を中和 | 皮下注射 | 月1回 |
フレマネズマブ(アジョビ®) | CGRP分子を中和 | 皮下注射 | 月1回または3ヶ月1回 |
2. 画期的な研究:I-GRAINE研究の成果
イタリアで実施されたI-GRAINE研究は、CGRP抗体薬の長期効果を調べた世界初の大規模な実臨床研究です。この研究により、従来の1年間治療では得られなかった驚異的な効果が明らかになりました。
研究の概要
研究期間: 2018年12月〜2024年6月(3年間の追跡調査)
参加施設: イタリア7州の10の頭痛専門施設
対象患者: 212名の高頻度片頭痛・慢性片頭痛患者
治療プロトコル: 12ヶ月治療→1ヶ月休薬を3回繰り返し
3. 驚くべき研究結果
50%以上改善した患者の割合の推移
25%
1年後(D1)
53.8%
2年後(D2)
77.8%
3年後(D3)
※D1、D2、D3は各治療サイクル後の1ヶ月休薬期間中の効果を示す
詳細な改善データ
· 根本改善: 慢性化や薬物乱用のリスクが大幅に減少
· 安全性: 重篤な副作用は認められず
4. なぜ3年間の治療が重要なのか?
従来の片頭痛予防薬は症状を一時的に抑えるだけでしたが、CGRP抗体薬による長期治療は「病気の経過を変える」可能性があります。
段階的な改善メカニズム
1年目
症状の軽減
CGRPの働きを阻害し、片頭痛発作の頻度と強度が減少
2年目
神経の安定化
三叉神経系の過敏性が改善し、より持続的な効果が現れる
3年目
根本的改善
脳の可塑性変化により、片頭痛の病的サイクルが断ち切られる
5. この研究の適応となる患者様
📋 適応基準
高頻度反復性片頭痛: 月8日以上の片頭痛
慢性片頭痛: 月15日以上の頭痛(うち8日以上が片頭痛)
治療抵抗性: 従来の予防薬3種類以上が無効
機能障害: 日常生活に著しい支障がある
従来治療で効果不十分だった方へ
β遮断薬、抗てんかん薬、三環系抗うつ薬、ボツリヌス毒素注射などの従来治療で十分な効果が得られなかった患者様が参加しています。研究参加者の平均で4.4種類の予防薬が無効だった方々が、劇的な改善を示しています。
6. 治療スケジュールと実際の進め方
評価項目 | 1年後(D1) | 2年後(D2) | 3年後(D3) | 改善度 |
50%以上改善率 | 25% | 53.8% | 77.8% | +52.8% |
月間頭痛日数 | 基準値 | -3.2日 | -5.8日 | 大幅改善 |
鎮痛薬使用回数 | 基準値 | -2.3回 | -4.9回 | 半減 |
慢性化への移行率 | 67.7% | 18% | 2.3% | -65.4% |
薬物乱用への移行率 | 34.2% | 10.1% | 1.3% | -32.9% |
期間 | 治療内容 | 期待される効果 | 重要なポイント |
第1サイクル(1-12ヶ月) | 月1回皮下注射 | 片頭痛頻度50%減少 | 効果判定は3ヶ月後 |
休薬期間1(13ヶ月) | 治療中断 | 25%の患者で効果持続 | 症状の経過を慎重に観察 |
第2サイクル(14-25ヶ月) | 月1回皮下注射 | さらなる改善 | 1回目より効果向上 |
休薬期間2(26ヶ月) | 治療中断 | 53.8%の患者で効果持続 | 持続効果の確認 |
第3サイクル(27-38ヶ月) | 月1回皮下注射 | 最大効果の達成 | 根本的改善期 |
休薬期間3(39ヶ月) | 治療中断 | 77.8%の患者で効果持続 | 長期効果の評価 |
7. 副作用について
⚠️ 副作用に関する重要な情報
CGRP抗体薬は非常に安全性の高い薬剤です。研究では重篤な副作用は報告されていません。
副作用の種類 | 発現率 | 対処法 |
便秘 | 軽度、一時的 | 食物繊維の摂取、適度な運動 |
注射部位反応 | 軽度、一時的 | 冷却、清潔保持 |
全身倦怠感 | まれ | 十分な休息 |
重篤な副作用 | なし | - |
8. よくある質問(FAQ)
Q1: なぜ3年間という長期治療が必要なのですか?
A: 片頭痛の根本的な改善には、脳の神経回路の変化が必要です。この変化は徐々に起こるため、十分な期間が必要となります。研究では1年目25%、2年目53.8%、3年目77.8%と段階的に改善率が向上することが証明されています。
Q2: 効果が現れるまでにどのくらいかかりますか?
A: 多くの患者様で投与開始から1-3ヶ月以内に効果が現れます。ただし、最大効果を得るには継続的な治療が重要です。
Q3: 従来の予防薬との違いは何ですか?
A: 従来薬は脳全体に作用するため副作用が多く、効果も一時的でした。CGRP抗体薬は片頭痛に特化した作用機序で、副作用が少なく、病気の経過自体を変える可能性があります。
Q4: 妊娠・授乳中でも使用できますか?
A: 妊娠中の安全性は確立されていないため、妊娠の可能性がある場合は必ず医師にご相談ください。授乳中の使用についても、リスクとベネフィットを慎重に検討する必要があります。
Q5: 長期使用の安全性は確認されていますか?
A: 3年間の研究で重篤な副作用は報告されていません。軽度の副作用(便秘、注射部位反応)は25.9%で認められましたが、いずれも一時的でした。
9. コメント
現在当院では1年~1年半程度のCGRP関連製剤の継続をおすすめして効果がない方はやめてしまう症例も経験があります。しかしこの研究で3年経過で改善している方もいらっしゃることから副作用がなければも少し長い経過での使用を相談しても良い可能性があると思います。もちろん費用面の問題もあるので相談の上継続かどうか患者様ごとに相談させて頂ければと思います。
10. 参考文献
📚 本記事は以下の論文に基づいて作成されています
Barbanti P, Aurilia C, Torelli P, Egeo G, d'Onofrio F, Finocchi C, Carnevale A, Viticchi G, Russo M, Quintana S, Orlando B, Fiorentini G, Messina R, Bartolini M, Pistoia F, Filippi M, Bonassi S, Cevoli S, Mannocci A; Italian Migraine Registry (I-GRAINE) study group.
"Three-year treatment with anti-CGRP monoclonal antibodies modifies migraine course: the prospective, multicenter I-GRAINE study"
Journal of Neurology (2025) 272:170
Published online: 25 Janua
【梅田院の開院について】
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