睡眠と頭痛の深い関係 ~良質な睡眠で頭痛を改善する~
- 大阪頭痛脳神経クリニック
- 4月15日
- 読了時間: 8分

この記事について
本記事は、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に基づき頭痛でお悩みの患者様に向けて睡眠の重要性と改善方法をご紹介するものです。
目次
はじめに:睡眠が頭痛に与える影響
睡眠は、私たちの健康維持に欠かせない重要な生活習慣です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると睡眠不足は日中の眠気や疲労に加えて、頭痛等の心身愁訴の増加、情動不安定、注意力や判断力の低下に直接関連することが科学的に証明されています。
頭痛クリニックを受診される患者様の中にも、睡眠の質や量に問題を抱えている方が多くいらっしゃいます。
質(睡眠休養感)・量(睡眠時間)ともに十分な睡眠を確保することで、頭痛の頻度や強度を大幅に改善できる可能性があります。
日本人の睡眠の現状
令和元年の国民健康・栄養調査結果では、驚くべき実態が明らかになっています。
1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は男性で37.5%、女性で40.6%に達しており特に働き盛りの30~50歳代では4割以上を占めています。

国際的にも深刻な状況
令和3年のOECD調査報告では、日本人の平均睡眠時間は調査対象33カ国の中で最も短いという結果が出ています。これは国民全体の健康課題として緊急に対処すべき問題です。
睡眠不足が頭痛を引き起こすメカニズム
3.1 急性的な影響
睡眠不足は以下のような急性的な症状を引き起こしこれらが頭痛の直接的な原因となります
情動不安定:ストレス耐性の低下により、緊張型頭痛のリスクが増加
注意力・判断力の低下:脳の疲労が蓄積し、血管性頭痛を誘発
自律神経の乱れ:血圧や心拍数の変動により、頭痛が発症しやすくなる
3.2 慢性的な健康リスク
睡眠の問題が慢性化すると、頭痛の根本的な原因となる疾患のリスクが上昇します
高血圧:血管への負担増加により、血管性頭痛の頻度が上昇
2型糖尿病:血糖値の変動が頭痛を誘発
心疾患・脳血管障害:重篤な二次性頭痛のリスク因子
うつ病等の精神疾患:頭痛との相互作用により症状が悪化
年齢別の推奨睡眠時間
睡眠時間の必要量は年齢によって変化します。
以下の表を参考に、適切な睡眠時間の確保を心がけましょう。
年齢層 | 推奨睡眠時間 | 重要なポイント |
小学生 | 9~12時間 | 成長ホルモンの分泌、学習の定着に重要 |
中学生・高校生 | 8~10時間 | 思春期の身体的・精神的成長をサポート |
成人 | 6時間以上 | 頭痛予防には7-8時間が理想的 |
高齢者 | 寝床8時間以内 | 睡眠効率を高めることが重要 |
個人差について
必要な睡眠時間には個人差があります。朝目覚めた時の「睡眠休養感」を重要な指標として、ご自身に適した睡眠時間を見つけることが大切です。
睡眠の質を高める7つの方法
5.1 定時就寝・起床
毎日同じ時刻に就寝・起床することで体内時計を整え、自然な眠気のリズムを作ります。休日も平日と2時間以上ずらさないことが重要です。
5.2 朝の太陽光を浴びる
起床後1時間以内に太陽光を浴びることでセロトニンの分泌が促進され夜間のメラトニン分泌リズムが整います。曇りの日でも屋外に出ることが効果的です。
5.3 適度な運動習慣
日中の適度な運動は深い睡眠を促進します。ただし、就寝3時間前以降の激しい運動は避け軽いストレッチ程度にとどめましょう。
5.4 カフェイン・アルコールの制限
カフェインの覚醒効果は4-6時間持続するため午後3時以降の摂取は控えましょう。アルコールは一時的に眠気を誘いますが睡眠の質を著しく低下させます。
5.5 最適な寝室環境
温度:16-19℃が理想的
湿度:50-60%を維持
光:遮光カーテンで完全に暗く
音:静かな環境(40dB以下)
5.6 就寝前の食事タイミング
就寝前の時間 | 摂取可能な食品 | 頭痛リスク |
3時間前 | 通常の夕食 | 低 |
2時間前 | 軽食(バナナ、ヨーグルトなど) | 低 |
1時間前 | 水分補給のみ | 中 |
直前 | 摂取は控える | 高 |
5.7 リラックス習慣の導入
就寝1時間前からリラックスタイムを設け、以下の活動を取り入れましょう
読書(紙の本推奨)
瞑想や深呼吸
軽いストレッチ
ぬるめの入浴(38-40℃、15-20分)
睡眠障害のチェックリスト
以下の症状に当てはまるものはありますか?
大きないびきをかく、または無呼吸を指摘される
十分な睡眠時間を取っても疲れが取れない
日中に強い眠気を感じることがある
夜中に何度も目が覚める
寝つくのに30分以上かかる
早朝(予定より2時間以上早く)に目が覚める
足がムズムズして眠れない
悪夢をよく見る
受診の目安
上記のうち3つ以上に当てはまる場合、または生活習慣の改善を1ヶ月続けても症状が改善しない場合は睡眠障害の可能性があります。医療機関での相談をお勧めします。
頭痛改善のための2週間睡眠チャレンジ
頭痛の改善を目指して、2週間の集中的な睡眠改善プログラムに取り組んでみましょう。
第1週:基本習慣の確立
毎日同じ時刻に就寝・起床(±30分以内)
起床後30分以内に太陽光を浴びる
カフェインは午後3時までに制限
就寝3時間前までに夕食を済ませる
第2週:睡眠環境の最適化
寝室の温度・湿度を調整
遮光カーテンを設置
就寝1時間前からデジタルデトックス
リラックス習慣(入浴、読書など)を導入
記録をつけましょう
睡眠時間、就寝・起床時刻、睡眠休養感(10段階評価)、頭痛の有無・程度を毎日記録することで改善の効果を客観的に把握できます。
季節と睡眠
睡眠時間は季節によっても変動することが知られています。冬季には夏季と比較して10~40分程度睡眠時間が長くなる傾向があります。

この変動は、日長時間(日の出から日の入りまでの時間)の変化が主な原因とされています。季節の変化に合わせて睡眠パターンを調整することも、頭痛の予防に有効です。
特別な状況での睡眠
9.1 交替制勤務の方へ
夜勤や交替制勤務に従事される方は概日リズム(体内時計)の乱れにより頭痛が起こりやすくなります。以下の対策が有効です
勤務前の仮眠(20-30分程度)
明るい照明下での作業
勤務後は速やかに暗い環境で休息
サングラスを使用した帰宅
9.2 妊娠・更年期の女性へ
女性ホルモンの変動は睡眠の質に大きく影響し、頭痛の原因となることがあります
妊娠期:つわりや胎動による睡眠中断への対処として、短時間の昼寝を活用
更年期:ホットフラッシュ対策として、吸湿性の良いパジャマや寝具を使用
どちらの場合も、規則的な生活リズムの維持が重要
まとめと受診の目安
良質な睡眠は、頭痛の予防と治療において極めて重要な役割を果たします。本記事でご紹介した睡眠改善方法を実践することで、多くの患者様が頭痛の軽減を実感されています。
医療機関受診の目安
睡眠改善を1ヶ月続けても頭痛が改善しない
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある
日常生活に支障をきたすほどの睡眠障害がある
頭痛の性質や頻度に急な変化がある
睡眠と頭痛の関係は複雑で個人差も大きいため、改善が見られない場合は専門医による詳しい検査と治療が必要な場合があります。お一人で悩まず、医療機関にご相談ください。
コメント
睡眠障害は頭痛の方にも共存しやすく、頭痛がストレスで眠れない場合もあれば眠れなくて頭痛が悪化する方どちらもおられるかと思います。
睡眠導入剤を使用して眠れるようにしてしまう方法もありますが、依存性や日中の眠気、ふらつきなどの副作用もあるので可能な限り環境を整えて自然な睡眠を得られるのが理想的と思いますので上記記事を掲載しました。
難治性な不眠、頭痛どちらにも認知行動療法や臨床心理士さんの介入で改善が得られる方もいらっしゃるので病院の受診時に心理士さんに相談できる環境のクリニックを選択するのも良い選択かと思います。
参考文献
1.厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
2.Vandekerckhove M, Wang YL. Emotion, emotion regulation and sleep: An intimate relationship. AIMS Neurosci. 2018;5(1):1-17.
3.Groeger JA, et al. Dissociating effects of global SWS disruption and healthy aging on waking performance and daytime sleepiness. Sleep. 2014;37(6):1127-42.
4.Wang D, et al. The effect of sleep duration and sleep quality on hypertension in middle-aged and older Chinese. Sleep Med. 2017;40:78-83.
5.Reutrakul S, Van Cauter E. Sleep influences on obesity, insulin resistance, and risk of type 2 diabetes. Metabolism. 2018;84:56-66.
6.Korostovtseva L, et al. Sleep and Cardiovascular Risk. Sleep Med Clin. 2021;16(3):485-97.
7.Li L, et al. Insomnia and the risk of depression: a metaanalysis of prospective cohort studies. BMC Psychiatry. 2016;16(1):375.
8.厚生労働省「国民健康・栄養調査」令和元年
9.OECD Gender data portal. https://www.oecd.org/gender/data/
10.Hirshkowitz M, et al. National Sleep Foundation's updated sleep duration recommendations: Final report. Sleep Health. 2015;1:233-243.
11.Buysse DJ. Sleep health: can we define it? Does it matter? Sleep. 2014;37:9-17.
監修医師紹介
大阪頭痛脳神経クリニック
猪股 拓海 Takumi Inomata

資格・所属学会
日本内科学会 内科専門医
日本頭痛学会 頭痛専門医
日本神経学会 脳神経内科専門医
専門分野
脳神経内科
略歴
2018年
秋田大学医学部医学科 卒業
市立秋田総合病院 初期臨床研究プログラム
2020年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2022年
国立病院機構 あきた病院 脳神経内科
2023年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2025年
天王寺だい脳神経外科
2026年
大阪頭痛脳神経クリニック / 天王寺だい脳神経外科
天王寺だい脳神経外科
山田 大 Dai Yamada

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
身体福祉障害者指定医
難病指定医
日本脳神経外科コングレス
日本頭痛学会
日本脳卒中学会
日本認知症学会
日本頭痛学会 頭痛専門医
専門分野
頭痛の治療
認知症の治療
首、腰の病気、しびれ
血管の病気
めまい、たちくらみ
てんかん
高血圧、高脂血症、糖尿病
リハビリテーション
略 歴
2013年
近畿大学医学部医学科 卒業
高砂市民病院 初期研修医 内科、外科、製鉄記念広畑病院 救急科
2015年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2018年
医療法人寿会 福島県 総合南東北病院 脳神経外科
2019年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2021年12月
医療法人寿会 富永病院 退職
2022年2月
天王寺だい脳神経外科 開院




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