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新しい片頭痛治療薬『ゲパント』について

  • 執筆者の写真: 大阪頭痛脳神経クリニック
    大阪頭痛脳神経クリニック
  • 1月28日
  • 読了時間: 8分

更新日:6 日前

はじめに

片頭痛でお悩みの皆様は頭痛の激しい痛みや吐き気、光や音への過敏症状により、日常生活に大きな支障をきたしておられることと思います。近年、片頭痛治療において新薬「ゲパント系薬剤」が登場し、多くの患者様に新たな治療選択肢をもたらしています。本記事では、この革新的な治療薬について、分かりやすくご説明いたします。


目次






  1. 片頭痛のメカニズムとCGRP


片頭痛が起こる仕組み

片頭痛は単純な「頭痛」ではありません。脳の血管周辺の神経が異常に活性化することで起こる神経血管性の疾患です。この過程で様々な化学物質が放出され、血管の拡張や炎症を引き起こします。その結果、激しい拍動性の頭痛、吐き気、光・音・匂いへの過敏症状が現れます。


CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の役割

CGRPは、片頭痛発作時に大量に放出される重要な物質です。この物質は以下の作用があります:

  • 血管拡張作用:頭部の血管を広げ、拍動性の痛みを引き起こします

  • 炎症促進作用:血管周辺に炎症を起こし、痛みを増強させます

  • 痛み信号の伝達:痛みの信号を脳に強く伝える働きをします


CGRPを抑えることで片頭痛を改善できる理由

CGRPの働きを阻害することで、片頭痛の根本的な原因にアプローチできます。CGRPの作用を防ぐことにより、血管の異常な拡張や炎症を抑制し、痛み信号の伝達を阻害することで、片頭痛症状を効果的に改善することが可能になります。




  1. ゲパント系薬剤とは


新世代の片頭痛治療薬としての位置づけ

ゲパント系薬剤は、CGRPまたはCGRP受容体を標的とした革新的な片頭痛治療薬です。従来の治療薬とは全く異なる作用機序を持ち、「片頭痛専用に設計された初の経口薬」として注目されています。


従来の急性期治療薬との違い

従来主流だったトリプタン系薬剤は、セロトニン受容体に作用して血管を収縮させる薬剤でした。一方、ゲパント系薬剤はCGRP受容体を阻害することで、より特異的に片頭痛のメカニズムにアプローチします。これにより、心血管疾患のある患者様にも安全に使用できる可能性があります。


第2世代、第3世代の違い

  • 第2世代ゲパント:リメゲパント、ウブロゲパント、アトゲパント(経口薬)

  • 第3世代ゲパント:ザベゲパント(点鼻薬など、多様な投与経路を特徴とする)




  1. 承認されているゲパント系薬剤の比較

薬剤名

商品名

用途

用量

米国FDA承認年

特徴

 

リメゲパント

Nurtec ODT

Vydura

急性治療・予防

75mg/日

2020/2021年

口腔内崩壊錠

予防・急性期どちらも使用可能

ウブロゲパント

Ubrelvy

急性治療

50-100mg

2019年

頭痛発作時に服用

2時間後に再投与可能

アトゲパント

Qulipta

予防専用

10-60mg/日

2021年

毎日服用による予防

初の予防専用ゲパント

ザベゲパント

開発中

急性治療

経鼻投与

開発中

点鼻薬タイプ

第3世代の特徴



  1. 有効性データ


月間片頭痛日数の減少効果


4週間あたりの片頭痛日数減少効果(臨床試験結果)


薬剤名

減少効果

プラセボ(偽薬)

-2.4日

アトゲパント 10mg

-3.6日

アトゲパント 60mg

-4.2日

リメゲパント

-4.3日

※数値が大きいほど、片頭痛日数がより多く減少したことを示します。



2時間後の痛み消失率について

急性治療薬としてのゲパント系薬剤は、服用から2時間後の頭痛消失率においても、プラセボと比較して統計学的に有意な改善を示しています。特に、従来のトリプタン系薬剤が効果不十分だった患者様においても、良好な治療効果が確認されています。




  1. 副作用と安全性


各薬剤の主な副作用

薬剤名

主な副作用

発現頻度

注意すべき副作用

 

リメゲパント

悪心

2%

過敏症(まれ)

ウブロゲパント

悪心、眠気、口の渇き

2-4%

中枢神経系の副作用

アトゲパント

悪心、便秘、眠気

5-9%

肝酵素上昇(1%)

ザベゲパント

味覚異常、鼻の違和感

軽度

重大な副作用の報告なし


重要な安全性情報

  • 死亡リスクの増加は認められていません

  • 肝障害のリスクは従来のゲパント(初代)で問題でしたが、大幅に低下

  • 報告された重篤な有害事象の多くは、薬剤との因果関係が低いと判断されています

  • 長期的な血管への影響については、継続的な観察が必要です




  1. どのような患者さんに適しているか

ゲパント系薬剤は、以下のような患者様に特に適している可能性があります:


適応となる可能性が高い患者様


  1. トリプタン系薬剤が効果不十分だった方

  2. 複数のトリプタンを試しても改善しなかった方

  3. トリプタンの効果が不安定な方

  4. 心血管疾患をお持ちの方

  5. 冠動脈疾患、不整脈、高血圧の既往がある方

  6. 血管収縮作用のない薬剤が必要な方

  7. 副作用の少ない治療を希望される方

  8. 従来薬で副作用に悩まされた方

  9. 仕事や日常生活への影響を最小限にしたい方

  10. 予防治療を希望される方

  11. 月に4回以上の片頭痛発作がある方

  12. 生活の質の向上を重視される方




  1. トリプタンとの違い

比較項目

トリプタン系薬剤

ゲパント系薬剤

 

作用機序

セロトニン受容体作動薬

(血管収縮作用)

CGRP受容体拮抗薬

(特異的阻害作用)

治療効果

高い効果

(確立された実績)

良好な効果

(新しいアプローチ)

副作用プロファイル

血管収縮に関連する副作用

胸部圧迫感、めまいなど

軽微な副作用

主に消化器系症状

心血管疾患患者

慎重投与または禁忌

使用可能

(血管収縮作用なし)

予防効果

急性治療専用

急性・予防両方可能

(薬剤により異なる)

使用制限

月10日以内推奨

より柔軟な使用が可能




  1. 今後の展望


さらなる研究の必要性

ゲパント系薬剤は比較的新しい薬剤であるため、以下の分野でさらなる研究が進められています:

  • 長期安全性データの蓄積:10年以上の長期使用における安全性の確認

  • 特殊患者群での使用:妊娠・授乳期、小児・青少年、高齢者での安全性と有効性

  • 個別化医療の推進:患者様の遺伝的背景や病状に応じた最適な薬剤選択




  1. 医師との相談と個別化医療


治療選択における重要なポイント

ゲパント系薬剤の使用にあたっては、以下の点について医師と十分に相談することが重要です。

  • 既往歴の確認:心血管疾患、肝・腎機能、アレルギー歴

  • 併用薬の確認:CYP3A4阻害薬など相互作用のある薬剤

  • 片頭痛の特徴:発作頻度、重症度、従来治療の効果

  • ライフスタイル:仕事、家庭生活への影響、治療目標


継続的なフォローアップの重要性

ゲパント系薬剤による治療では、定期的な効果判定と安全性評価が不可欠です。特に以下の点について継続的な観察が必要です。


  • 治療効果の評価(頭痛日記の活用)

  • 副作用の有無と程度

  • 肝機能検査(特にアトゲパント使用時)

  • 生活の質の改善度




  1. コメント

日本で最初に使用可能になるゲパントはリメゲパントになります。新規薬剤なので今までの注射製剤のCGRP関連抗体製剤と比較すると安全性を含めてまだデータが少ない面がありますが内服であることは注射の恐怖が理由で治療を強化できなかった方には朗報になると思います。ただ2日に1回内服であることや月の内服上限数などもあり、現在の注射製剤が月1回投与で済むことを考えると患者さんに応じてどの治療が楽かは変わってくる印象です。主治医と相談もしくは頭痛専門医を受診して、どの治療が良いか患者様自身で選択していただくのが重要な薬剤と考えます。




  1. 参考文献


  1. Rissardo, J.P.; Caprara, A.L.F. Gepants in Acute and Preventive Migraine Therapy: A Narrative Review. Brain Sci. 2022, 12, 1612. https://doi.org/10.3390/brainsci12121612



※本記事は医学文献に基づいた一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。治療に関する決定は、必ず医師とご相談の上で行ってください。

※記載されている薬剤情報は主に米国FDA承認に基づいており、日本での承認状況とは異なる場合があります。





  1. 監修医師紹介

大阪頭痛脳神経クリニック

猪股 拓海 Takumi Inomata



  • 資格・所属学会

    • 日本内科学会 内科専門医

    • 日本頭痛学会 頭痛専門医

    • 日本神経学会 脳神経内科専門医



  • 専門分野

    • 脳神経内科



略歴


2018年

秋田大学医学部医学科 卒業

市立秋田総合病院 初期臨床研究プログラム


2020年

市立秋田総合病院 脳神経内科


2022年

国立病院機構 あきた病院 脳神経内科


2023年

市立秋田総合病院 脳神経内科


2025年

天王寺だい脳神経外科


2026年

大阪頭痛脳神経クリニック / 天王寺だい脳神経外科




天王寺だい脳神経外科

山田 大 Dai Yamada



  • 資格・所属学会

    • 日本脳神経外科学会 専門医

    • 身体福祉障害者指定医

    • 難病指定医

    • 日本脳神経外科コングレス

    • 日本頭痛学会

    • 日本脳卒中学会

    • 日本認知症学会

    • 日本頭痛学会 頭痛専門医


  • 専門分野

    • 頭痛の治療

    • 認知症の治療

    • 首、腰の病気、しびれ

    • 血管の病気

    • めまい、たちくらみ

    • てんかん

    • 高血圧、高脂血症、糖尿病

    • リハビリテーション


略 歴


2013年

近畿大学医学部医学科 卒業

高砂市民病院 初期研修医 内科、外科、製鉄記念広畑病院 救急科


2015年

医療法人寿会 富永病院 脳神経外科


2018年

医療法人寿会 福島県 総合南東北病院 脳神経外科


2019年

医療法人寿会 富永病院 脳神経外科


2021年12月

医療法人寿会 富永病院 退職


2022年2月

天王寺だい脳神経外科 開院











 
 
 

コメント


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TEL

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